東京精神医学会第106回学術集会での矢倉朱緒先生の発表について簡単に報告します。
発表テーマは,「不登校を繰り返す思春期不安症症例の入院治療」でした。内容的にすっきりしていて,分かりやすい発表でした。
「努力されたケースの発表でした」と座長の自治医科大学の須田先生からコメントをいただきました。質問は,須田先生から「担当看護師の選択に工夫はあったのか?」,朝霞病院の渡辺先生から「担当医と担当看護師の活躍はよかったと思うが,普通なら心理士とかPSWとかも関与するべきケースのように思うがどうか?」の二つでした。それには,「担当看護師の選択には看護師長などの配慮がある。担当看護師以外にも
日々の担当となった看護師もチームとして協力して関わっている。但し,対人関係を広げるのが難しい患者なので,なるべく担当看護師の関与が中心になるように配慮がなされた。心理士やPSWの関与もありだとは思うが,発表した体制で治療が回り始め
たので,それらのスタッフの密な関わりは要請しなかった....」というように答えておいででした。これらの質問は,このケースで良かったのは担当スタッフの選択だろうという話になるでしょうから,もっともなものだと思いました。私たちは,多くの患者の治療をスムーズに進めることができるように,担当スタッフの選択にもっと気配りをすることが必要なのだという問題提起をしていただいたように感じました。
2016.3.13 林 直樹
3月12日午後、第99回東京デイケア連絡会が東大病院デイホスピタル(DH)主管で開催されたため、出席してみた。東大病院DHは1974年に故宮内勝先生が中心となって開設され、当院のデイケアにとっても源流とも言うべき深いつながりのあるデイケアである。スタッフの清水さんの他、現役やOBも加わって「東大デイホスピタルにおけるリカバリー支援」
というタイトルで活動の紹介が行われた。まずは、①メンバー主導のプログラム運営、②担当スタッフによるケースマネジメント、③CBTや心理教育による対処スキルの獲得というDHでのリハビリテーションの仕組みが現役メンバーも加わって紹介された。このような発表自体がメンバーのリハビリテーションのチャンスとして生かされていることは「出来
事はすべて個人のリハビリに使う」という説明内容と見事に合致していると感心させられた。引き続いて、OB自らがリカバリーストーリーを紹介してくれた。「社会復帰」もいいけど、「リカバリー」の方がさらに前向きな気がする、という感想に基づいて、講演のタイトルも変更されたとのこと。後半は、「これからのデイホスピタル」という内容で、英国のリカバリーカレッジを参考に現在進行形で進められているDHの取り組みが紹介された。リカバリーカレッジとは、「自分の人生をより豊かにするために、自ら主体的にこころの元気回復を求める学びの場」ということで、日本でも巣立ち会などで既に運営されているとのことである。東大DHでも、40年以上が経過して古くなったプログラムをメンバーと一緒に改編しようという取り組み(メンバーが学会に参加予定!とのこと)、院内・学内でのピアスタッフ登用や精神障がい者雇用促進などの試みが行われているそうである。診療報酬改訂などにより全国的に厳しい情勢の中に置かれ、今後の存在意義が問われる中で、同じ大学病院デイケアとして非常に参考になる話を聞くことができた。今回の催しを知らせてくれたDHの清水さん、管先生に感謝したい。
栃木 衛