精神科学教室 医局員の声

きみあきの休み時間9th HEN頭痛

2017.02.07

六年に一度やって来る頭痛は、そんな彗星のごとき周期であっても、片頭痛と呼ぶのだそうだ。
O月X日曇り。病棟でサマリーを作っていると、頭の奥がじゅーっとしてきた。変だと思っているうちに、文の意味が分からなくなってきた。印刷して目の前に置くと、日本語、のような、そうでないような文字が踊る、ロゼッタ石でも眺めている気分になった。自分が、何語を読んでいるのか、分からなくなってきた。
オレンジ色したカーテンが私の右目をかすめたかと思うと次の瞬間
真っ赤な雨粒がどうと降ってきたので視界が不良。私はギュッと目をつぶって、そうして目をあけて、また目をつぶって、またあけて、と繰り返すのであるが  ますます 何が書いてあるのか分からない。頭の左っ側がずんずん痛んできた。
もう夕暮れ時とみえて  私の両隣りで雑談が始まり  中◯先生という名が聞こえた。私はその先生を知っているはずで  顔も浮かぶのだけれど  誰?  磁石が反発する   ちょうどあんな感じに  何度も何度も  力づくで顔と名を一致させようとするのだが  いっこうに  くっつかないのである。中◯は  元阪神の投手ではなかったか  みんな何を間違えているのだ  悪夢の中では決して声が出ない  戻って  スタッフルームに
五分ほど眠った。そうすると、中◯という先生は、確かに、
いたような気がしてきた。もう今日はダメだ、昼飯食ってねえんだ、ローソンに行くべし。エレベーターに乗って鏡を見れば、左目から血が出ている。おお、いけねぇ。明日から休もう。私は痛む頭で、今日が火曜なのか木曜なのかも分からず家に帰った。
家に帰ると、
なぜか自分には三十三歳の妻と四歳の息子がいたので、こう話しかけてみた。
頭が痛くなって、目から血が出た、どう思うか。
三十三歳の妻は言った、「MRIしたらいいわ。
なぜMRIしないの」
四歳の息子は言った、「きっと、無理しすぎたんじゃない?」
なるほど確かに三十三歳の妻が言う通り、
もう少しMムRIリしたらいいのかもしれない。気合いが足りないだけかもしれぬ。しかし四歳の息子の意見ももっともである。
待てよ。脳腫瘍。私は、思わず、戦慄、
これがもとで亡くなった若い美人を、知っている。以前、勤めていた病院の、実にきれいな、看護婦さんだった。私だって、もしかするぞ。

   さて私のMRIの結果はと言うと、
とくに病気は見つからなかった。やはり片頭痛だったらしい。自分の脳を見られる  なんて赤裸々。ただ、思ったよりもムリムリっとはしておらず、つまり肉感的な感じではなく、何だか頭の悪そうな脳みそだなぁというのが正直なところである。こんな頭じゃ、もう無理はできないよな。できないのだ。

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