精神科学教室 活動報告

「出生の季節・場所と精神疾患」

2014.03.24

科学評論社発行の月刊「精神科」から依頼のあった総説「出生の季節・場所と精神疾患」が3月号に掲載されました。

  この総説では主に統合失調症において冬生まれや都市部生まれが多いという学説の紹介と検討を行っています。ご存じない方は驚くかもしれませんが、以下のようなことがかなり前から知られています。

・冬から春にかけて出生すると5~8%程度統合失調症あるいは双極性障害発症のリスクが高まる(オッズ比で1.07程度)

・ここで言う「冬から春」は北半球では概ね1~4月に相当するが、南半球では7~9月に相当する。ちなみに、四季のない赤道地域では特定の時期における出生の増加は認められず、また、出生季節の効果量は緯度に有意に相関する、すなわち高緯度地域ほどオッズ比が高くなる。

・都市部で出生した人の方が農村部で出生した人よりも統合失調症発症のリスクが高まる。

 では、これらの所見についての原因は何なのか? という疑問に対しても本総説で検討しています。ご興味のある方は医局まで別刷りを請求頂くか、こちらの論文(英文)をご覧下さい。

 なお、この「生まれ月」の問題は帝京とは縁が深く、衛生学講座の初代教授だった三浦悌二先生が草分け的な存在です。以前から自作と思われる「生まれ月学のすすめ」というホームページが公開されていましたが、最近になってリニューアルされたと思ったら、2011年にお亡くなりになっており、ご遺族の手になるものであるらしいことが分かりました。これも何かの縁かもしれません。三浦先生のご冥福をお祈り致します。

 現実には「生まれ月」から疾患の本態に迫っていくのは容易ではないというのが本研究テーマとして取り組んできての率直な感想です。一方で、色々と調べると面白いことは確かで、遊び心で生まれ月と性格傾向の関連を論文(英文)にまとめたことがあります。こちらもご興味のある方はご一読下さい。

栃木衛

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