精神科学教室 活動報告

野村医師の研究が最優秀English Session賞を受賞しました

2021.06.11

臨床助手 野村芳子医師が前任地の理化学研究所 脳神経科学研究センターで行った研究「Cellular  models of 1q21.1 deletion and duplication syndrome using human ES-derived neural cells」が2021年5月にWeb開催された第63回日本小児神経学会学術集会で最優秀English Session賞を受賞しました。

林前主任教授の論文が掲載されました

2021.04.30

林前主任教授らの論文Delusion progression process from the perspective of patients with psychoses: A descriptive study based on the primary delusion concept of Karl Jaspers(邦訳:精神病の患者から見た妄想発展プロセス:カール・ヤスパースの一次妄想概念に基づく記述論的検討)がPLoS ONE誌に掲載されました(PLoS ONE 16(4): e0250766)。

カール・ヤスパースは、「精神病理学総論(原論)(第1版 1913年)」を著して精神医学の方法論のひとつを提示したドイツの精神科医です(後に哲学に転身して活躍しました)。 この「精神病理学総論」は、歴史的な業績として世界に広く知られています。

ヤスパースの現象学的(記述的)精神病理学と呼ばれる方法では、患者さんの体験を忠実に聞き取り、理解することが身上の一つとされています。彼は、それによってさまざまな精神病症状の理解を深めたのですが、一次妄想の概念はその中の重要なものの一つです。一次妄想とは、他のさまざまな妄想の原基となるような体験として患者の体験を聞き取る中で選び出されたものであり、妄想発展の重要なキーポイントとして位置づけられます。しかし、その概念の実証的研究による検討はこれまで行われていませんでした。

林前主任教授らの研究では、精神病の患者を対象として、一次妄想(妄想知覚、妄想気分、妄想記憶、妄想着想)の調査が行われて、前景にある妄想の起源が一次妄想とされる比率が高率であり、さらに、一次妄想と前景にある妄想との間に密接な関連があり、そこに認知・感情・思考の特徴の共通性があることが確認されました。このような結果は、ヤスパースの一次妄想の概念を裏付けており、一次妄想に重要な臨床的な意味があることを示しています。今後さらに、一次妄想についての研究を進めることによって、精神病の病態理解や治療に有益な手掛かりが得られることが期待されます。

林前主任教授らはまた、100年以上昔の理論を検証することによって現代の精神医学を豊かにする可能性のあることが示されたことにも、この研究の意義があると考えています。是非ご一読下さい。

 

 

 

 

 

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